健康診断結果報告書マニュアル|定期健康診断報告書の書き方も解説!

健康診断の報告書を作成するのは、意外とハードルが高い業務です。「どこをどう記入すればいいの?」「この項目の意味が分からない」「提出期限や提出先がはっきりしない」という疑問を抱えながら、手探りで作業を進めている人事担当者の方も多いのではないでしょうか。

この記事では、定期健康診断結果報告書の正しい書き方を記入例とともに詳しく解説し、特殊健康診断や歯科健康診断などの報告書についてもわかりやすく説明します。

ミスなく正確に報告書を作成することは、企業の労務リスクを回避するうえでも非常に重要です。ポイントや注意点を押さえて、スムーズに作成できるよう準備を整えていきましょう。

1.定期健康診断結果報告書の書き方【記入例付き】

画像出典:『定期健康診断結果報告書 様式第6号

定期健康診断結果報告書は、労働安全衛生規則第52条に基づき、常時50人以上の労働者を使用する事業者に提出が義務付けられている書類です。健康診断にはさまざまな種類がありますが、ここでは、定期健康診断結果報告書の書き方について、詳しく解説します。

以下の記入例を参考に、各項目ごとの記入方法を1つずつ確認していきましょう。

1-1 労働保険番号

「労働保険番号」とは、労災保険や雇用保険に加入する際に付与される番号です。労働保険関係成立届を提出することで、労働基準監督署から労働保険番号が付与されます。「雇用保険適用事業所番号」と間違えやすいので注意しましょう。

労働保険番号は、都道府県番号(2桁)、所掌番号(1桁)、管轄番号(2桁)、基幹番号(6桁)、枝番号(3桁)の計14桁で構成されています。番号が分からない場合は、労働保険の年度更新申告書や、過去の健康診断結果報告書を参照しましょう。

1-2 対象年・健診年月日

「対象年」は、健康診断を実施した年を記入します。1年の実施結果をまとめて報告する場合は、( 月~ 月分)の欄に対象期間を記入しましょう。

また、「健診年月日」は、実際に従業員が健康診断を受けた日付を記入します。複数日にわたって実施した場合は、最後の1人が健康診断を実施した日付の記入が必要です。

例えば、令和7年5月1日から令和7年9月20日の間に全従業員の健康診断を実施した場合は以下のように記載します。

  • 対象年「9(令和)07年(5月~9月分)」
  • 健診年月日「9(令和)07年09月20日」

1-3 事業の種類・事業場の名称

「事業の種類」は、厚生労働省の分類表『日本標準産業分類の中分類』に基づき記入します。

例えば、「輸送用機械器具製造業」「情報サービス業」「飲食料品卸売業」といった分類があります。

「事業場の名称」は、健康診断を実施した場所の正式名称を記載してください。本社以外で実施した場合は「株式会社●● ●●支店」「●●株式会社 ●●工場」など、必ず事業場名を書きましょう。

1-4 事業場の所在地

「事業場の所在地」には、健康診断を実施した事業場の郵便番号と住所、電話番号を正確に記載します。建物名やフロア番号も忘れずに記載してください。労働基準監督署で事業場登録されている所在地と一致しているかどうかも、念のため確認しておきましょう。

1-5 健康診断実施機関の名称・所在地

「健康診断実施機関」とは、健康診断を行った医療機関や健診センターのことです。正式名称(病院名・クリニック名など)と所在地(住所)を記載します。間違えやすいので、契約書類などで正式名称を確認しましょう。

なお、複数の機関で健康診断を実施した場合は、それぞれについて記載する必要があるので注意してください。

1-6 在籍労働者・受診労働者数

「在籍労働者数」には、報告書作成時点の在籍者数ではなく、健康診断実施時点で在籍していた人数を記載します。なお、臨時的に雇用している従業員は含みません。

「受診労働者数」は、実際に健康診断を受診した人数を記載します。企業で実施する健康診断の代わりに、人間ドックを受診している方も含めて報告が必要です。

従業員のカウント方法は、当コラムの「3-1 常時使用する労働者や常時50人以上のカウント方法」で詳しく解説しています。

1-7 労働安全衛生規則第13条第1項第3号に掲げる業務に従事する労働者数

労働安全衛生規則第13条第1項第3号に掲げる業務に従事する労働者には、特定の有害業務(坑内業務、深夜業、粉じん作業など)に従事する従業員の人数を記載します。具体的には、労働安全衛生規則第13条第1項第3号に掲げる以下の業務が対象です。

出典:『労働安全衛生規則第13条』e-Gov 法令検索

1-8 健康診断項目

定期健康診断では、身長・体重、血圧、視力・聴力検査、尿検査、胸部エックス線検査、血液検査など、法律で定められた項目を実施します。「健康診断項目」には、以下の各検査ごとの実施者数と有所見者数をそれぞれ記載しましょう。

  • 聴力検査(オージオメーターによる検査)(1000Hz) 
  • 聴力検査(オージオメーターによる検査)(4000Hz) 
  • 聴力検査(その他の方法による検査)
  • 胸部エックス線検査
  • 喀痰検査
  • 血圧
  • 貧血検査
  • 肝機能検査
  • 血中脂質検査
  • 血糖検査
  • 尿検査(糖)
  • 尿検査(蛋白)
  • 心電図検査

なお、労働安全衛生規則第44条により、医師が認める場合は省略ができる項目もあるため、実施者数が受診労働者数に満たない場合もあります。

1-9 所見のあった者の人数

「所見のあった者の人数」には、各健康診断項目で「所見あり」と診断された従業員数を記入します。各健康診断項目の有所見者数の合計ではなく、いずれかが有所見であった者の人数を記入することがポイントです。

つまり、1人の従業員が複数の項目に所見がある場合は、1人として数えます。

なお、「所見のあった者の人数」が各健康診断項目の「有所見者数」より小さくなることはないため、誤りが無いか注意して記入しましょう。

1-10 医師の指示人数

「医師の指示人数」には、有所見の従業員のうち、医師から「要医療」「要精密検査」などの指示が出た人数を記載します。

単に「経過観察」程度で済む場合はカウント不要ですが、指示がある場合は忘れず記載しましょう。この数値を適切に管理することが、従業員の健康リスク対策に直結します。

なお、採血した血液が凝固して十分な検査が実施できなかったなど、健康診断項目結果が有所見なのかはっきりせず、医師が再検査を指示する「要再検査」の場合は、医師の指示人数に含めないため、注意が必要です。

出典:『健康診断結果報告書の記載内容について』 中央労働災害防止協会

1-11 産業医氏名・所属機関の名称及び所在地

「産業医氏名・所属機関の名称及び所在地」には、事業場で選任している産業医の氏名、所属機関の正式名称及び所在地を記載します。

以前は産業医の押印(電磁的記録で保存する場合は電子署名)が必要でしたが、電子申請の利便性を向上するため、令和2年8月より押印・電子署名が不要となりました。

出典:『健康診断個人票や定期健康診断結果報告書等について、医師等の押印等が不要となります。』厚生労働省

1-12 事業者職氏名・労働基準監督署長殿

「事業者職氏名」には、代表取締役など事業場の代表者の役職と氏名を記載します。日付は、原則として報告書を提出する日を記載しましょう。

「労働基準監督署長殿」には、事業場を管轄する所轄労働基準監督署の名前を記入します。事前に全国労働基準監督署の所在案内にて、所轄労働基準監督署がどこかを確認しておくと安心です。

2.健康診断報告書の提出方法や期限

健康診断結果報告書は、所轄の労働基準監督署長宛に提出します。提出方法には、紙での提出と、e-Govを利用した電子申請の2種類があります。提出期限は「遅滞なく」とされていますが、実務上は健康診断の実施後1か月以内が目安とされています。

正確な提出先や方法を確認し、期限を守って対応することが重要です。ここでは、報告書の種類、提出方法、提出期限について詳しく見ていきましょう。

2-1 報告書の種類

報告書の提出が義務付けられている健康診断は、全部で13種類です。対象となる健康診断の種類に応じて、以下のようにそれぞれ異なる様式が定められています。

健康診断の種類結果報告書の名称
定期健康診断定期健康診断結果報告書
特定業務従事者の健康診断定期健康診断結果報告書
歯科医師による健康診断有害な業務に係る歯科健康診断結果報告書
特定化学物質健康診断特定化学物質健康診断結果報告書
有機溶剤等健康診断有機溶剤等健康診断結果報告書
鉛健康診断鉛健康診断結果報告書
四アルキル鉛健康診断四アルキル鉛健康診断結果報告書
高気圧業務健康診断高気圧業務健康診断結果報告書
電離放射線健康診断電離放射線健康診断結果報告書
除染電離健康診断除染等電離放射線健康診断結果報告書
石綿健康診断石綿健康診断結果報告書
じん肺健康診断じん肺健康管理実施状況報告
指導勧奨による特殊健康診断指導勧奨による特殊健康診断結果報告書

出典:『各種健康診断結果報告書』厚生労働省

事業場の業務内容や従業員の業務実態に応じて、適切な様式を選択し、漏れなく提出する必要があります。

2-2 提出方法

健康診断結果報告書の提出方法には、紙での提出と、e-Govを利用した電子申請の2通りが選択できます。

  1. 書面(紙)による提出
    報告書を作成し、事業場を管轄する労働基準監督署に直接持参するか郵送します。報告書は原本と写しの2部用意しておくと、受付印を押した写しを返却してもらえます。健康診断の結果は保管義務もありますので、忘れず準備しましょう。
  2. 電子申請(e-Gov)による提出
    政府が運営する行政ポータルサイト「e-Gov電子申請」を利用して提出する方法です。e-Govアカウントを登録後、ブラウザの設定とアプリケーションのインストールを行うと利用開始できます。初回は操作方法の確認も必要なため、早めの準備をおすすめします。

    出典:『労働局・労働基準監督署への申請・届出はオンラインをご活用ください』厚生労働省

2-3 期限

健康診断結果報告書の提出期限は、労働安全衛生規則第52条に基づき、「遅滞なく」と定められています。「遅滞なく」の定義は、行政通達においても、なるべく早急に、速やかに、などさまざまな解釈がありますが、健康診断結果が揃ってから概ね1ヶ月以内が目安とされています。

厚生労働省は、健康診断結果報告は暦年で集計する関係から、年度末近くに健康診断を行った場合でも、遅くとも3月15日までには報告書を提出するように求めています。。

健康診断実施後、結果が出るまでに時間がかかる場合もありますが、すべての結果が揃い次第、できるだけ早く提出するようにしましょう。

3.健康診断報告書の作成ポイント

健康診断結果報告書を作成する際には、対象となる従業員の正しいカウント方法や、深夜業の定義、個人情報の適切な取り扱い、さらに歯科健康診断についても確認が必要です。

各項目の要件を理解し、正確に記載することで、労務リスクを未然に防ぎましょう。

3-1 常時使用する労働者や常時50人以上のカウント方法

「常時使用する労働者」とは、所定労働時間がその事業場の正社員の所定労働時間の4分の3以上である者のうち、次の要件に該当する労働者を指します。

  • 雇用期間の定めが無い者
  • 期間の定めのある契約により使用される者のうち、契約期間が1年以上である者
  • 契約更新により1年以上使用されることが予定されている者
  • 期間の定めのある契約で、既に1年以上引き続き雇用されている者

パートタイマーやアルバイトでも、上記の条件に該当すれば「常時使用する労働者」に含まれます。

「常時50人以上の労働者を使用する」とは、その事業場において常時雇用されている労働者数が50人以上である状態を指します。日雇労働者やパートタイマー等の臨時的労働者の数を含めてカウントする点に注意が必要です。

出典:『定期健康診断結果報告書(様式第6号)の関係法令(PDF)』厚生労働省

3-2 深夜業を含む業務の意味

「深夜業を含む業務」に常時従事する従業員に対しては、特定業務従事者の健康診断を実施しなければなりません。「深夜業」とは、労働基準法において定められている午後10時から午前5時の時間帯に従事する業務です。

「深夜業を含む業務」とは、業務の常態として、深夜業を週に1回以上または月に4回以上行う業務を指します。

常時使用され、午後10時から午前5時の間に少しでも業務を行った場合は、「深夜業を含む業務」と判断されますので注意しましょう。

3-3 個人情報の取り扱い

労基署に提出する健康診断結果報告書は、従業員個人に結びつく情報は記載されていないため、要配慮個人情報には該当しません。

しかし、健康診断結果報告書は、要配慮個人情報に該当する個人の健康診断結果票の内容をもとに記載するため、健康診断結果票は慎重な取り扱いが求められます。適切に保管し、アクセス権限を設定するなど、情報漏洩防止策を講じましょう。

個人情報の取り扱いについては、こちらの記事もあわせてご参照ください。

関連記事:『健康情報等取扱規程とは?策定の目的や9つの内容を解説【ひな形つき】

3-4 歯科健康診断結果報告書様式の作成

かつては、定期健康診断結果報告書内に歯科健診の項目も含まれており、常時50人以上の労働者を使用する事業場のみ、報告義務がありました。2022年10月の法改正により、常時使用する労働者数にかかわらず、歯科健康診断を行った事業者は別様式である「有害な業務に係る歯科健康診断結果報告書(様式第6号の2)」を提出することが求められています。

歯科健康診断の対象者や実施時期は以下のとおりです。対象の従業員がいる企業では、提出漏れがないよう注意しましょう。

【対象となる業務・労働者】

塩酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、弗化水素(フッ化水素)、⻩りんその他⻭⼜はその支持組織に有害な物のガス、蒸気または粉じんを発散する場所における業務に常時従事する労働者

【実施時期】

対象業務に常時従事する労働者に対し、その雇入れの際、対象業務への配置替えの際、対象業務に就いた後6ヶ月以内ごとに1回

出典:『労働安全衛生法に基づく⻭科医師による健康診断を実施しましょう』厚生労働省

4.【2025年1月】電子申請の義務化とは

2025年1月より、労働安全衛生関係の一部の手続きにおいて、電子申請が義務化されました。定期健康診断結果報告書を含む、一部の健康診断結果報告書も対象となります。具体的には以下の7つが対象です。

  • 労働者死傷病報告
  • 総括安全衛生管理者/安全管理者/衛生管理者/産業医の選任報告
  • 定期健康診断結果報告
  • 心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告
  • 有害な業務に係る歯科健康診断結果報告
  • 有機溶剤等健康診断結果報告
  • じん肺健康管理実施状況報告

電子申請を初めて利用する場合、e-Govのアカウント登録やアプリケーションのインストールなど、準備に時間がかかる可能性があります。また、システムの操作に慣れるまでは、入力に手間取ることもあるでしょう。

しかし、一度慣れれば、書類作成の手間が省け、労働基準監督署に出向かず、いつでも手続きを行うことができるなどのメリットがあります。

なお、経過措置として、パソコンを所持していないなどの理由によって電子申請が困難な場合は、当面のあいだ、書面による報告も可能です。しかし、いつまで紙が使えるかは未確定のため、早めの電子申請体制づくりをおすすめします。

5.正しい健康診断報告で、従業員の健康管理を強化しましょう

健康診断結果報告書は、従業員の健康状態を把握し、適切な健康管理体制を構築するために重要な書類です。正確な記入と期限内の提出は、法令遵守の観点からも欠かせません。

この記事で紹介した記入例やポイントを参考に、ミスのない報告書作成を心がけましょう。

【この記事のまとめ】

・定期健康診断結果報告書は、常時50人以上の労働者を使用する事業場で提出が必要
・健康診断結果報告書は、健康診断の種類によって様式が異なる
・2025年1月からは一部の報告書について、原則電子申請が義務化されている

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企画・編集:横内さつき
執筆:うちやま社会保険労務士事務所 代表 内山美央 /oneself.産業保健師一同


小橋 正樹

監修小橋 正樹

株式会社oneself. 代表取締役|統括産業医

2010年、産業医科大学医学部を卒業。その後、3年間にわたる救急病院での診療経験を通じ、働く人の健康が大切だと改めて実感。2013年、産業医活動を開始。スタートアップ企業の体制づくりから外資グローバル企業の統括マネジメントまで、合計で30社を超える組織の健康管理に伴走。そのなかで、産業医有資格者数の中でも1%以下の保有率と言われる産業医の専門医・指導医資格などを取得。2019年、本質的な産業保健をより広めるためには企業社会への更なる理解が必須という想いで自ら経営者となることを決意し、株式会社oneself.を設立。2023年、誰もが確かな価値を実感できる産業保健サービスを社会へ届けるため「THE OCCUPATIONAL HEALTH.」を提供開始。


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